記号の定義
本章は行列とベクトルがたくさん出て来るが、記号にはいろいろ流儀があって紛らわしいので最初に決めておく。
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用語 |
記号 |
説明 |
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スカラー scalar |
a |
小文字で表す |
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ベクトル vector |
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太字の小文字で表す 列ベクトル(m行1列の行列)とする |
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行列 matrix |
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大文字で表す |
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複素共役 complex conjugate |
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転置 transpose |
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行と列を入れ替えたもの |
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エルミート共役 Hermitian conjugate |
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複素共役をとって転置したもの |
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ベクトルの外積 outer product |
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ベクトルの内積 inner product |
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ただの積aTbではなく複素共役との積とする |
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複素数の絶対値 |
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ベクトルのノルム norm |
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ノルムの定義はいろいろあるが ユークリッドの長さを使う |
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単位行列 identity |
I |
大文字のIで表す |
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値域 range |
range(A)={ Ax } |
xが動いたときにAxが動く範囲 Aの列ベクトルが張る空間と同じ |
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次元 dimension |
dim({x}) |
その空間の独立なベクトルの個数 |
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階数 rank |
rank(A)=dim(range(A)) |
Aの列ベクトルで独立なものの個数 m行n列(m≧n)の行列Aにおいて rank(A)=nのときAはフルランクという |
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行列のノルム |
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xが単位円上を動いたときのAxの長さの上限 |
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疑似逆行列 pseudoinverse |
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非正方行列Aの逆行列のようなもの 正方行列のときはA-1と同じ |
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条件数 condition number |
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連立方程式Ax=bの 誤差の増幅率を示す |
◇
記号の書き方で迷うのは複素共役とエルミート共役である。
数学の本では、複素共役はバー、エルミート共役はアスタリスクを使うようだが、バーはワープロで書けないので避けた。
工学の本では、複素共役はアスタリスク、エルミート共役はHを使うようだが、Hはべき乗と紛らわしいので避けた。
物理学の本では、複素共役はアスタリスク、エルミート共役はダガー(†)を使うようで、これを採用した。
転置は、べき乗と区別するために左肩に書いている本もあるが、エルミート共役の実数版と見なしたいので、しかたなく右肩につけることにした。
◇◇
行列の要素は複素数とするが、実数の場合は次表のように読みかえればよい。
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実数 |
複素数 |
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対称行列 AT=A |
エルミート行列 A†=A |
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直交行列 ATA =I |
ユニタリ行列 A†A=I |